整数環における原始的な指標の積が原始的となる条件

命題

m, n \geq 2を互いに素な整数、Gを可換な乗法群(単元を1とする)、f :  (\mathbb{Z}/(m))^{*} \rightarrow Gg : (\mathbb{Z}/(n))^{*} \rightarrow Gを原始的な乗法的群準同型とする。

h : (\mathbb{Z}/(mn))^{*} \simeq (\mathbb{Z}/(m))^{*}×(\mathbb{Z}/(n))^{*} \rightarrow Gを、h(x + (mn)) = f(x + (m))g(x + (n))と定めると、これは原始的な指標になる。

なお、原始的な指標の定義については、 この記事を参照。

証明

与えられた環、イデアルこの記事で取り上げた性質1~4のいずれか満たすことを示せばよい。

 (mn)を含むイデアル(l)とすると、lmnの真の約数である。

次の場合に分けて考える。

場合分け1: lmまたはnが互いに素な場合

lmと互いに素であると仮定する(nの場合も同様)。

このとき、lnを割り切るから (n) \subset (l)で、nmが互いに素だから、集合 \{1 + kn | k \in \mathbb{N}\}(Z/(m))^*の1つの代表系を含み※1、よってf(1 + kn + (m)) \ne 1を満たすk \in \mathbb{Z}が存在する。

 kn \in (l) \cap (n) \setminus (m)だから、性質1を満たすことがわかる。

場合分け2: lm,nが互いに素でない場合

lm,nとそれぞれ共通約数を持つ。このとき、m,nのいずれかはlを割り切らない(m,nが両方ともlを割り切る場合、l = mnとなり矛盾)。

mlを割り切らないとする(nの場合も同様)。

ここでm = m_1 m_2と分解する(ただしm_1|l, (m_2, l) = 1)。

このとき、m_1n \in (l) \cap (n) \setminus (m)、かつ (m_1n) + (m) \ne \mathbb{Z}だから、性質3を満たすことがわかる。

(証明終) 

 

注意書き

※1  n mが互いに素だから、 \{kn | k \in \mathbb{N}\} Z/(m)の代表系を成す。よって \{1 + kn | k \in \mathbb{N}\} Z/(m)の代表系を成し、その可逆元の集合が (Z/(m))^*の代表系を成す。